偽装請負

偽装請負とは?

契約書上は『請負契約』であっても、実質的には『労働者派遣契約』であったり『雇用契約』であったりすることを『偽装請負』といいます。

・『請負契約』と『労働者派遣契約』の違いについては、厚生労働省の資料を添付します。→厚生労働省『労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド』)

・『請負契約』と『雇用契約』の違いについては、国土交通省の資料を添付します。→国土交通省『監理技術者制度運用マニュアル

偽装契約にあたるかどうかは『注文者と労働者の間に指揮命令関係があるか?』という点で判断します。
仮に注文者と労働者の間に指揮命令関係があれば、それは請負契約には当たらず労働者派遣契約あるいは雇用契約に該当する可能性が高いということです。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準
(昭和 61 年労働省告示第 37 号)
(最終改正 平成 24 年厚生労働省告示第 518 号)

第一条 この基準は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「法」という。)の施行に伴い、法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業(法第二条第三号に規定する労働者派遣事業をいう。以下同じ。)に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする。
第二条 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であつても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
一 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであ
ること。
(1) 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
(2) 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
二 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
(2) 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
第三条 前条各号のいずれにも該当する事業主であつても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が法第二条第一号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。

厚生労働省『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』より

なぜ偽装請負が起きるのか?

なぜ偽装請負が起きるのでしょうか?
それは労働者を受け入れる派遣先の建設業者にとって以下のようなメリットがあるからです。

  • 時間外手当を支給する必要がない
  • 社会保険料等を負担する必要がない

実態は労働者派遣契約や雇用契約であっても、形式上は請負契約としてしまうことで、時間外手当や社会保険料等の支払を免れ、結果的にコストを抑えることが可能となってしまうのです。

もちろん労働者側からすると本来受けるべき報酬や保障を得られなくなるので、偽装請負は禁止されています。

指揮命令関係にあるかどうかの判断

先述の通り、偽装契約にあたるかどうかは『注文者と労働者の間に指揮命令関係があるか?』という点で判断します。

いくつか具体例を検討します。
まず『元請が下請に注文した工事に関して、下請の作業員に対して順序や方法の指示、技術指導を行ったりすること』、これは指揮命令関係があることになるので、もし契約書上『請負契約』であった場合には『偽装請負』となります。
次に『新しく導入した機械の使い方の説明等を元請けが下請に対して行うこと』、これだけでは指揮命令関係にはあたりません。
また『元請けが下請に対して、安全衛生のための指示出しを行うこと』、こちらも該当しません。

このように、『注文者と労働者の間に指揮命令関係があるか?』という判断は、個別具体的に行わなくてはなりません。