監督処分を受けた後の合併や分割

監督処分の承継

不正行為等を行った建設業者が合併や分割をして他の建設業者に承継された場合、許可行政庁から受けた監督処分(指示処分・営業停止処分・許可取消処分)も承継されることになります。

建設業者が事業譲渡・合併・分割(事業承継)を行う場合はあらかじめ事前の認可を、相続の場合は死亡後30日以内に相続の認可を受けることで、空白期間を生じることなく、承継者(譲受人、合併存続法人・分割承継法人)及び相続人が、被承継者(譲渡人、合併消滅法人、分割被承継法人)及び被相続人における建設業者としての地位を承継することが出来ますが、この事業承継等に関わる事前の認可を受けて承継した場合と、事前に受けずに承継した場合とで違いが生じることになります。

事前の認可を受けて承継した場合

不正行為等を行った建設業者(行為者)が、不正行為等の後に事業承継等に関わる事前の認可を受けて合併や分割を行うケースにおいては、行為者の建設業者としての地位を承継した建設業者(承継者)に対して監督処分が行われることになります。

7  不正行為等を行った企業に合併等があったときの監督処分

不正行為等を行った建設業者(以下「行為者」という。)が、不正行為等の後に建設業法第17条の2の規定による建設業の譲渡及び譲受け又は合併若しくは分割を行った場合又は同法第17条の3の規定による相続をした場合は、行為者の建設業者としての地位を承継した建設業者(以下「承継者」という。)に対して監督処分を行う。

国土交通省『建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準』より

また、行為者が営業停止中など現に監督処分を受けている最中である場合も、当然にその監督処分は承継者に承継されることになります。

一方、建設業法45条から55条までに規定されている罰則に関しては、建設業者としての立場に関わらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った法人(もしくは個人)に対して刑罰を科すものであるため、当該刑罰に関しては承継されません。

【第17条の2関係】
1.譲渡及び譲受け又は合併若しくは分割(この【第17条の2関係】において「事業承継」という。)
について

「許可に係る建設業の全部」とは、許可を受けている別表の下欄に掲げる建設業の全てをいう。なお、被承継人が許可を受けている建設業のうち一部の許可のみの事業承継は認められない。ゆえに、被承継人が許可を受けている建設業のうち一部の許可についてのみ事業承継を行おうとする場合は、被承継人において事業承継しようとする許可を廃業させた上で、承継人においてあらためて新規に当該許可を受けさせる必要がある。
「建設業者としての地位を承継する」とは、法第3条の規定による建設業の許可(更新を含む。)を受けたことによって発生する権利と義務の総体をいい、承継人は被承継人と同じ地位に立つこととなる。このため、建設業者としての地位の承継人は、被承継人の受けた法に基づく監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に承継することとなる。一方、法第45条から第55条までに規定される罰則については、建設業者としての立場にかかわらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った被承継人という法人(個人)そのものに対して刑罰を科すものであるため、当該刑罰については、承継人に承継されるものではない。

国土交通省『建設業許可事務ガイドライン』より

事前の認可を受けずに承継した場合

合併や分割において必要を生じた変更等について、変更届等の手続きを行うだけで、事業承継等に関わる事前の認可を受けずに承継するケースもあります。
この場合は、承継者の建設業の営業が、行為者の建設業の営業と継続性及び同一性を有すると認められるときには、以下の様に処分が行われるます。

①行為者が建設業を廃業している場合には、承継者に対して監督処分を行う。
②行為者及び承継者がともに建設業を営んでいる場合には、両社に対して監督処分を行う。

【第17条の2関係】
1.譲渡及び譲受け又は合併若しくは分割(この【第17条の2関係】において「事業承継」という。)
について

~中略~

また、行為者の営業を同法第17条の2又は同法第17条の3の規定によらずに承継した場合であっても承継者の建設業の営業が、行為者の建設業の営業と継続性及び同一性を有すると認められるときは、
① 行為者が当該建設業を廃業している場合には、承継者に対して監督処分を行う。
② 行為者及び承継者がともに当該建設業を営んでいる場合には、両者に対して監督処分を行う。

国土交通省『建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準』より